私はお酒に詳しくないからと言って、「どれが美味しいですか?」と聞かれることが良くあります。お酒が好きな方への贈り物を選びにご来店されたのでしょう。
それだけを聞いて「これがオススメです!」と的確なセレクトをするほどの特技を、私は持ち得ていない。私がこの仕事に携わり始めた頃、ある蔵元の営業の方が、「日本酒で辛口をと言われればこれを勧めるし、甘口と言われればこれを勧める。そしてそれは同じ酒」と、ある酒販店のことを話された。その時は笑ったが、そんないい加減な対応はきついなと思った。
例えば、焼酎を贈りたいという希望なら、まず予算を聞いて種類を聞いてと進むのですが、予算を聞くと戸惑われる方も多いようです。財布の中身を探られているような気がするのでしょうか。たまに「いくらでもいいです」なんて言いながら、5,000円ほどの商品を勧めると「そんな高くなくていい」なんて返ってきます。
(それを聞きたいのです・・・)
なんて言葉はぐっと飲みこんで、芋、麦、米などの種類を聞くと、「焼酎」だと返って来る。その焼酎のことを聞いているのだけれど、「美味しいやつをお願いします」と仰る。
これが困る。
そもそも、、美味しくない焼酎は売っていないし、造り手も美味しいと思って世に出しているはず。更には、飲む方の好みで「美味しい」という評価は分かれる。極端に言えば、黒霧島などの芋焼酎の香り好きだと言う方もいれば、それが嫌いだから麦焼酎を飲むと言う方もいる。
そんな時にはどう対応するかと言えば、焼酎の中で一番売れている芋焼酎を選ばざるを得ない。そして、価格もそれなりの商品を。ある程度高額になると同じ芋焼酎でも、柔らかくて甘い芋の香りが心地良い商品がある。それを勧める。仮に麦派でも米派でもこれなら抵抗がなく飲んで頂けると思うから。
こんな場合、店主に・・・特に頑固な店主が居る店ではどう言ったらいいのか。
「焼酎好きな方に贈りたいのですが、何が好みか分かりません。5,000円程度の予算で、小さいボトルを2本見繕ってください。店主にお任せします。先様がきっと喜ぶであろうおススメの商品をお願いします」
・・・・そう言われると、こちらも酒屋のプライドをかけてお選び致します。そして、うちの店のラッピング娘に指令を出して、無料でリボン付きのラッピングを施させていただきます。
こんなこと言うから、また、来店客を減らしたかもしれない・・・・。
2024-07-08 15:37:37
商いの話
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