私がこの仕事に関わり始めた四十数年前。
こんな田舎のスナックもそこそこ繁昌していた。家での晩酌では普段飲まないウイスキーが良く売れていた。もちろんその当時から王道はサントリー。その地位はゆるぎなかった。その次が随分離れて・・・というか、サントリーの背中も見えないニッカウヰスキー。そして差があってキリン・シーグラムだった。その当時の売り上げを考えると、10:2:1程度ではなかったかと思う。いやいや、二位との差はもっとあったのかもしれない。20:2:1だったかもしれない。
そんな時代。
どんな理由かは定かではないが、先代は何故かこのキリン・シーグラムに思い入れがあったようで、その頃のお得意先のスナックの棚にはこの商品が並んでいた。跡を継いだ私も、必然とこのメーカーのしょうひんを販売していたのだが、サントリーじゃない理由を考えていくうちに、ウイスキーの中身を知ることになった。
パッと見ると黒いボトルに入ったサントリーの「オールド」や「リザーブ」はかっこ良かった。それに比べて、キリンの製品はどれも透明の瓶に入っている。なかなか目を引かない。棚に並んだボトルを比べると、サントリーの黒いボトルの方が壮観だった。しかし、どうして黒いボトルに入っているのか、どうして透明のボトルに入っているのを自分なりに調べてみると、いろんなことに気が付いた。いい加減なことを軽はずみに言うと責任問題になりそうだから言わないが、それ以来、私もキリン・シーグラムの商品に愛着が出て来た。

その当時、サントリーのオールドの希望小売価格は2,770円。それに対して、キリンの「ロバート・ブラウン」は2,820円。リザーブの3,200円に対して「エンブレム」は3,250円だったと記憶する。いずれも50円高い設定。キリンのサントリーに対するプライドだと思った。要は品質に対する自信だと思った。
水割りでしか飲めないウイスキーと、ロックでも十分美味いウイスキー。当然、とっちが売れるかと聞かれれば後者だと思う。しかし、世の中はそう甘くない。おびただしいほどのテレビや雑誌の広告。そして、新規の店に対する協賛と言う物量作戦。そりゃサントリーに走っても無理はないとは思う。しかし、先代は扱ってもらうハードルははるかに高いキリンを薦めて、その当時のお得意先の多くはキリンのお店だった。
あとで先代から聞くと、キリンの担当セールスマンとの個人的な付き合いの深さがあったらしい。私に代替わりした頃には、その方は転勤されていたようで、代わりに誰もうちの店を訪ねてくることは無くなった。しかし、偏屈者は勝手に思いを寄せているキリン・シーグラムの商品を継続して拡売に励んだ。
つづく・・・。
2025-05-22 15:44:59
お酒の雑学
| コメント(0)